ガラクタのカタログ

ウェールズ旅行記1―国鉄最終章


ウェールズのナショナルレールは、その大半がウェールズ政府が経営するTransport for Wales社(TfW社)によって運行されています。国鉄民営化後の経営権を巡る契約上のゴタゴタはさておき、私がこの地を訪れた頃は、Arriva Trains Wales社からTfW社に経営が移ってから1年と経っていなかったので、青緑色の旧塗装がまだ主流でした。

ここもイングランドから来る一部の長距離列車を除いて近代化が遅れていたものの、2020年代前半からは新型車両が相次いで投入される計画になっていたので、図らずも旧型車両の最後の活躍を一瞥することが出来ました。この記事に載せたのは2019年9月のウェールズ旅行の合間に撮った写真で、例によって旅行中故に手抜き撮影ですが、それでも最低限の記録にはなったかと思います。撮影場所は特記なき限りCardiff Central駅です。


電車

私がカーディフを訪れたのは、電化工事が完了する前のことでした。従って、架線柱の整備が進んではいたものの、ロンドンからのクラス800系列を無理やり「電車」と呼ぶのでなければ、架線から電気を取ってモーターで走る鉄道車両はいませんでした。現在はバッテリー駆動の電車も走っているようですね。


気動車

ウェールズを走る列車のほとんどは気動車で、国鉄形ディーゼルカーが大半を占めておりました。形式自体はイングランドなど他の地域でも見られるものが多かったのですが、ロンドン近郊では走っていませんから、私はちょっと新鮮に感じた記憶があります。


Class 142

当時の主力の1つ、Pacerシリーズのクラス142。ローカル線用の軽快気動車で、見て分かる通りバスの部品を多用しています。元々安普請だったことに加えて、この頃には想定を超える長期使用により老朽化が進んでおり、凄まじい乗り心地が乗客に大層嫌われておりました。



Class 143

同じくPacerシリーズのクラス143。両者共に1985-87年にかけて投入され、2021年までに全廃。クラス143の方は、クラス142を少し改良した一方で、ボギーではなく二軸台車で更なる経費削減を図った結果、乗客はこれまた気分が悪くなるほどの振動に悩まされることに。



Class 150

こちらは1984-87年に製造された、Sprinterシリーズのクラス150で、Llandudno駅に停車中。カーディフを含めてウェールズ各地で運行されており、ローカル運用の主力でした。Pacerシリーズと違って乗り心地などは一般的な気動車と同じだったため、比較的長めの距離を走る列車にも使用されていました。



Class 153

こちらもSprinterシリーズのクラス153。元々は1987-88年に製造されたクラス155を単行運転するために改造したもの。こちらはオリジナルの運転台ですが、改造で取り付けた側も前から見ると一見同じ。但し中は圧倒的に狭く、乗務員からは不評だとか。



Class 153

ここでようやくTfW社の新塗装であるグレーの車両が拝めました。後追いですが、クラス153が2両とクラス150が1本連結された4両編成です。ちなみに、SprinterシリーズはPacerシリーズと併結して走行することも多く、クラス142ないし143と150の組み合わせは頻繁に目にしました。乗るならもちろんSprinter。



Class 158

せっかくSprinterの話題が出たのだから、Great Western Railway社のクラス158も。同形は1989-92年に製造され、Express Sprinterと呼ばれており、長距離のローカル運用が主体。GWR社の編成は、グレート・ウェスタン本線の電化工事進捗に伴い徐々に西へと追いやられ、この頃はカーディフからコーンウォール方面で走っておりました。ちなみにTfW社も同形を使用していますが、私は乗ったものの撮る機会はありませんでした。



Class 170

Shrewsbury駅で発車を待つのは、お馴染みのクラス170。West Midlands Railwayの編成で、くすんだオレンジ色の塗装が特徴的ですが、個人的には曇りの日じゃなくても発色があまり綺麗ではないので好きにはなれません。クラス170は後年、Greater Anglia社からTfWに転属するものが現れました。



Class 175

1999-2001年に製造されたクラス175。長距離列車での運用が主で、BirminghamやManchesterとウェールズの各都市を結ぶ列車に多く充当されていました。JRの特急に近い位置付けの列車にも多く使用されていましたが、車内設備や間合い運用で普通列車に使用される姿を見た限り、個人的には急行列車みたいなものだと思います。



Class 175

こちらは新塗装のクラス175。ちなみにTfWの公式YouTubeアカウントを見たところ、これは厳密には塗装ではなくラッピングのようです。ちょっと意外。




客車列車

ここでも現役ですが、スコットランドと違ってインターシティ125が大車輪の活躍を見せているわけではなく、客車列車は少数派という印象でした。私が訪れた直後にほとんどが置き換えられてしまったので、これまた面白い記録になったかもしれません。


Class 67

多分JRで言うところの特急に相当するPremier Serviceという名の速達列車で、一等車1両と普通車3両に荷物車が付いています。食堂車はないものの、一等車の乗客には食事が出るので、まさにプレミアムといった感じ。CardiffとHolyheadの間を、平日に3往復走ります。牽引はクラス67で、1999-2000年に製造されたディーゼル機関車です。



Class 67

Premier Serviceとは別に、客車普通列車も僅かにありました。写真はManchester PiccadillyからHolyheadへ向かう列車がLlandudno Junctionに到着した様子。こちらは全て普通車だったと記憶しています。



Mark 3

Premier Serviceも普通列車も、客車の方はお馴染みマーク3で、きちんと荷物制御車による推進運転も行なわれていました。LlandudnoからManchester Piccadillyに向かう列車は、荷物車と機関車を合わせて6両編成で、客車列車にしては短くて効率が悪そうに見えます。マーク3は、2021年に東海岸本線から転属したマーク4(インターシティ225)に置き換えられました。



Class 37

ここでの目玉は、カーディフ近郊のRhymney線で朝晩のラッシュ時に走っていた、クラス37牽引の普通列車。イギリスでよくある新車投入の遅れによる車両不足を受けて、2019年6月にこの組み合わせが復活し、鉄道ファンの注目を集めました。



Class 37

クラス37はイギリスを代表するディーゼル機関車の1つで、1960-65年に製造されました。写真は国鉄色で、案の定なかなかに人気の高い存在でした。子供用アニメ「チャギントン」の登場人物(車両?)そっくりですね。



Mark 2

客車は骨董品とも言うべきマーク2で、スコットランドと違いこちらは国鉄色の割合が高く、このように機関車まで含めて統一編成を組む日もありました。保存鉄道ではなく通勤客輸送に勤しむ姿は、まるで30-40年前にタイムスリップしたかのようでした。しかし、老朽化もあって活躍の日々は続かず、2020年3月までに全て離脱しました。



これも旅行のついでに撮ったものでしたが、それなりにまあまあな記録を残せて満足でした。特に、クラス37とマーク2の客車列車は是非とも一度見ておきたかったので、帰国直前に良い土産が手に入ったと思います。







(2022.8.12作成)