ガラクタのカタログ

日立の躍進―「あずま」とその仲間たち


2007年、日本の鉄道車両メーカーとしては初めて、日立製作所がイギリスの鉄道車両を受注しました。それから10年以上が経ち、日立はイギリス国内に工場を構え、2010年代後半からはインターシティの置き換え用に数を大きく増やしています。その多くはAT300シリーズと呼ばれる特急形車両で、日本でもJR九州885系などでお馴染み「Aシリーズ」の一員です。


クラス395

イギリス進出第一陣となったのは、Southeastern社が運行しているクラス395電車。交直両用で、高速鉄道High Speed 1の開業に合わせ、2009年までに6連29本174両が製造されました。最高速度は時速225キロで、国内を走る車両では最速です。但し、Ashford International以東では在来線(直流区間)を走り、第三軌条方式の電化故に最高速度は160キロに制限されます。愛称はJavelin(槍)で、その鋭い先頭形状にぴったり。



クラス395

主にSt. PancrasとCanterbury、Dover、MargateやSandwichなど南東部を結ぶ列車に充当され、ラッシュ時には2本繋げて12両編成を組む運用も多くあります。この車両の投入によって、ロンドンと南東部の間の所要時間は劇的に短縮され、通勤圏が拡大しました。2012年のロンドン五輪の際には、シャトル列車にも活躍。人気の観光地カンタベリーに行く際の足として、日本人にも多く利用されていると聞きます。



GWRクラス800

続いて登場したのはクラス800及び802バイモード車両。バイモード車両というのは、電車と電気式気動車両方の機能を持つ車両で、イギリスでは非電化区間に直通する長距離列車用の車両を中心に多く見受けられます。日本ではJR東日本の「四季島」がこれに当たります。



GWRクラス802

クラス800と802は瓜二つですが、後者は非電化区間での走行距離が長くなっています。いずれも2017年からまずGreat Western Railway社が5連と9連を投入し、5+5の10両編成を組むこともあります。PaddingtonからCardiffやPenzanceといった西部及び南西部に向かう列車に充当されており、2019年までにインターシティ125を淘汰しました。



LNER

2019年からはLNER社もクラス800の運行を開始。Azumaの愛称は、東海岸本線の「東」に掛けており、塗装は歌舞伎をモチーフにした赤と白。King's Crossでも頻繁に目にすることから、日本人にもすっかりお馴染みの車両となりました。Leeds、York、Edinburghとの往復が主ですが、一部はAberdeenやInvernessまで足を伸ばします。



AzumaとInterCity 225

なお、2017-20年にかけては、バイモードではなく電車のクラス801も投入されました。クラス800とは瓜二つで、すぐに見分けがつきません。両形式は、2019年までにインターシティ125を引退に追い込み、インターシティ225についても大半の運用を置き換えました。



この他に、Hull TrainsやTransPennine Expressなども既にクラス800系列を導入しており、またAvanti West CoastやEast Midlands Railwayなどでも新形式クラス803、805、807や810などを投入する計画です。2020年代にかけて、日立の車両はイギリスにおいて大きく躍進する見込みです。



Scotrail

おまけ:ちなみに、日立は普通列車用の車両も造っておりまして、スコットランドではクラス385という電車がEdinburghとGlasgowを中心に運行されています。





(2021.2.15作成)