幹線観察その5―落穂拾い
ここでは、日本人観光客には恐らくほとんど縁がないロンドンの通勤路線のうち、今までに上げてきた記事でカバーしきれなかった分を雑駁にまとめてみました。具体的には、Vivtoriaから南東部ケント方面へ向かうChatham Main Line、Charing Cross又はCannon Streetからテムズ川南岸を沿うように走るNorth Kent Line、Fenchurch Streetからテムズ川北岸を走るLondon, Tilbury and Southend Lineの3つです。
Chatham Main Line
ロンドンではVictoriaを発着し、ディケンズの小説にしばしば出てくるChathamの町を通りつつ、Dover支線とRamsgate支線に分かれます。また、ロンドンにおいても支線が存在します。運行は基本的にSoutheastern社が担当するほか、RainhamまではThameslinkの列車も走ります。
当地の主力はクラス375電車。1999-2005年に製造され、直流電化区間専用の編成と交直両用の編成がありますが、現在交流電化区間を走る定期運用は設定されていません。塗装を除けば、Southern社のクラス377電車との識別が困難なほどよく似ており、実際に改造されてクラス377に編入されたものもあります。
2003年以降に製造されたグループは、例によって前照灯が大型化されています。もっとも、他のボンバルディア製エレクトロスター系列(クラス377、クラス387など)と比べると、前面のデザインがやや異なります。まあそれでも鉄道写真を撮る人以外にはあまり関係ない話かもしれません。
もう1つは国鉄最末期に登場したクラス465電車。1991-94年に製造された直流電化区間用の電車で、姉妹形式クラス466電車と共に運用されています。クラス465は4連、クラス466は2連で、両者を組み合わせて10両編成になることもあります。
クラス465及び466はメーカーによって外観にちょっとした差異があり、特に前面の車番の付け方と天井のデザインが大きく違うのが分かります。なお、クラス465は2021年に一部置き換えられましたが、まだ当地では主力の一端を担います。
North Kent Line
こちらも主にSoutheastern社が担当し、Lewishamからテムズ川の南岸にある住宅地を通り、終点でChatham Main Lineに合流する通勤路線。但し、ほとんどの列車はCharing Cross又はCannon Street発着です。また、この地域では他の支線と合わせて循環列車が多数設定されており、初心者にはやや難しい運行形態となっています。
ここも大半の列車がクラス465又は466で運行されていますが、一部はこの地域だけで活躍するクラス376電車が使用されています。2004-05年に製造された直流通勤形電車で、5両編成又は2本繋いで10両編成で運行されています。上述のクラス375の仲間ですが、前面貫通路が無い分だいぶ雰囲気が異なります。
London, Tilbury and Southend Line
何とも長ったらしい名前の路線ですが、Fenchurch Streetから東側へ大きく3つの支線があり、Southendを経てShoeburynessへ向かいます。「それどこ?」となった方も多いかと思いますが、ロンドン側のターミナルだけ覚えて頂ければ結構です。ちなみに、Fenchurch Streetは地下鉄が通っておらず、最寄りはTower Hill駅です。運行はc2c社が担当します。
ここの列車の大半はクラス357電車で運用されています。1999-2002年に投入され、同時期に製造されたクラス168やクラス170といった気動車にそっくりな外観です。ちなみに、土休日など工事の関係で、c2cの列車がFenchurch StreetではなくLiverpool Street発着になることも珍しくありません。
以上挙げたのは、日本人なら一部の在住者を除いて鉄道趣味者しか用事の無さそうな路線です。地名が全然分からないと思った方も多いでしょうが、ご心配なく…いずれもかなり知名度の低い土地ばかりです。強いて言えば、Chatham Main Lineはカンタベリーへ行く観光客が使うかもしれませんが、実際に試してみた身としては、高速鉄道(ハイ・スピード1)を差し置いてわざわざ在来線に乗る意味は何もありません。何か団体臨時列車に乗る時か、よく分かっていない人が間違って乗っちゃうくらいかと思います(笑)
(2022.4.15作成)