ガラクタのカタログ

幹線観察その4―チルターン本線

Chiltern Main Lineは、シャーロック・ホームズで有名なベーカー街に近いMaryleboneと、Birmingham(Moor StreetとSnow Hill)を結ぶ路線です。1967年の西海岸本線電化により一旦は長距離列車がほとんど消滅し、ロンドン近郊から北西部の通勤輸送を中心に細々と運行されていましたが、国鉄民営化後の1990年代以降は高速化などの改良が進み、2010年代半ばにはかつての威光を取り戻しました。これに伴い、LondonとOxfordの間を行き来する需要等も、かなりの割合がPaddingtonからこちらに移っています。

他方、ロンドンという首都のど真ん中を走る「本線」でありながら未だに非電化で、全ての列車が気動車又はディーゼル機関車と客車によって運行されているという、何ともアンバランスで面白い路線でもあります。運行はChiltern Railways社が独占しています。なお、この他に2008年にはWrexham & Shropshire社によって、ウェールズのWrexham GeneralからShrewsburyとWolverhamptonを経由してMaryleboneへ行く長距離列車も設定されましたが、営業成績が振るわず僅か3年で撤退しています。


Class 165

まずは国鉄クラス165気動車。グレート・ウェスタン本線でもお馴染みの車両ですが、チルターンの車両は初期車で1990-91年に投入されました。当初は速達列車にも使用されていましたが、現在はAylesburyまでの普通列車など短距離の通勤輸送が主となっています。



Class 165

Chiltern Railwaysでは2011年から少しずつ銀色をベースとした新塗装に切り替わっていますが、クラス165については帯の色が変更された程度で、あまり雰囲気が変わっていません。ちょっと古めの車両ですが、リニューアル工事の際に冷房が取り付けられています。



Class 168/1

クラス165に似ていますが、こちらはクラス168気動車。クラス168は製造中に国鉄時代が終わり、奇しくも民営化後最初の新型となりました。こちらは初期車(番台区分はクラス168/0)で、全編成が4両を組み、同形28本中5本のみと比較的少数派です。



Class 168

2000年に投入されたグループ(番台区分はクラス168/1)は、地方路線でお馴染みのクラス170気動車とほぼ同一の外観となり、先の初期車と同一形式というのが俄かには信じられないですね。28本中8本が該当し、3両又は4両編成でこの路線の主力として運行されています。



Class 168

2004年に製造された後期車(番台区分はクラス168/2)。こちらもクラス170気動車の後期車とほぼ同一のデザインで、大型化された前面灯火類が目を引きます。やはり3両又は4両編成で、28本中6本がこのグループに属しています。



Class 168

こちらはクラス170からの改造編入車で、番台区分はクラス168/3。イングランド中部~北部で余剰になった編成を、チルターン本線の輸送力増強に充てたもので、2両編成9本が在籍します。クラス168/1と識別が困難ですが、スカートの形状と編成両数に差異があります。



Class 68

少数ながら、当地にも客車列車の設定があります。MaryleboneとBirmingham Moor Streetの間の速達列車が主で、Kidderminsterまで延長運転される列車や、Oxfordへ向かう列車もあります。牽引機はクラス68ディーゼル機関車で、下り方(バーミンガム側)に連結されます。



Mark 3

客車はお馴染みのマーク3(と言っても最近は激減してしまいましたが)。上り列車は例によって荷物制御車を先頭とした推進運転となっています。マーク3客車はリニューアルされ、ドアは自動化されています。ロンドンを発着する定期昼行客車列車は、今やこれが最後となりました。なお、この客車は元々Wrexham & Shropshire社が使用していました。



Class 172

最後にクラス172気動車(旧塗装)。2011年に製造され、近距離の通勤輸送を中心に使用されましたが、保安装置の都合で運用に制限がありました。2021年に運用を離脱し、ミッドランド地方へ転用されています。クラス168/2とは一見区別がつかない外観でした。



あまりメジャーな路線ではないですが、オックスフォードへ日帰り旅行するならこの路線を使ってみるのも良いかもしれません。賑やかな爆買い中国人に囲まれることも多いですが。



(2022.4.15作成)