ガラクタのカタログ

大動脈観察その3―グレート・ウェスタン本線


グレート・ウェスタン本線(Great Western Main Line)は、ロンドンから西部へ向かう重要路線。PaddingtonからSloughやReadingといったベッドタウンを通り、EU離脱によるホンダの工場閉鎖に揺れるSwindon、有名観光地Bathを経て、最後はBristolに至ります。この路線自体は全長200キロ弱と長くない方ですが、途中駅から幾つもの路線が分岐しており、Exeter、Plymouth、Penzanceといった南西部や、Cardiffを始めとするウェールズ方面への長距離列車も多数行き交います。ロンドン近郊は複々線で、ヒースロー空港直通列車が頻繁に運行されるほか、中間の小駅はTfLレールの通勤電車が停車します。


長距離列車

Great Western Railwayが担当する長距離列車。お馴染みのInterCity 125が1976年にデビューした際、最初に投入されたのはこの路線。2019年まで大役を務めた後、ロンドン発着列車は日立製のクラス800系列に置き換えられました。東海岸本線と違ってロンドン近郊以外はほとんど電化工事が進んでおらず、バイモード車両の独壇場となっています。


High Speed Train (First Great Western)High Speed Train (Great Western Railway)
High Speed Train (original livery)High Speed Train (BR Swallow)

最末期のインターシティ125は、First Great Western社時代の紺色をベースとした旧塗装と、Great Western Railwayの緑があり、混結も頻繁に行なわれていました。また、クラス43機関車のうち2両が、それぞれ登場当時と1980年代の国鉄色に復元され、特に前者は改番前のクラス253のトップナンバーでした。2019年には一部が短編成化の上、カーディフ近郊のローカル特急などに転用されましたが、その他は解体されました。


Class 390

ロンドン発着の長距離列車は日立の車両が大半で、クラス800と802が運用されています。クラス802の方がより大きい燃料タンクを積んでいるため、非電化区間のより長い列車に充当されることが多くなっていますが、パッと見ただけでは違いが分かりません。いずれも初期不良を乗り越え、2021年には車体の亀裂が問題となりましたが、元々英国ではどのメーカーでも重大トラブルが頻発することから、程なく沈静化しました。




中距離電車

長距離列車と同じくGWR社が主に運行を担当。ロンドン近郊を行き来する列車については、2010年代後半より徐々に電車化されましたが、変電所の容量不足も相まって一時は気動車代走が常態化。首都直結の大幹線がこのざまとは日本だと信じられませんが、それでも少しずつ近代化は進んでいるようです。


Class 387

最先端は2016年にデビューしたクラス387電車で、当初はラッシュ時にHayes & Harlingtonまでの短距離列車にしか入りませんでしたが、後にDidcot Parkwayまで運行範囲を拡大。但し、DidcotからOxfordまでの支線区は電化計画が凍結されてしまい、現時点では中途半端な感が否めない状態に。余剰となった編成は、Heathrow Expressに転用されています。



Class 165

今なお主力のクラス165気動車。国鉄時代末期の1992年に投入され、2連又は3連がありますが、ロンドン近郊ではもう少し長くなります。クラス387の投入により西部ローカル運用に軸足を移しましたが、電化工事がなかなか進まないことやクラス387の代走で、今なおしぶとく残っています。



Class 166

Bath Spa駅に到着した普通列車。こちらは姉妹形式のクラス166で、1992年の登場当初から冷房を搭載しており、長距離普通列車の運用を意識してトイレの数や座席に違いがあります。この形式を使用しているのは現時点でGWR社のみで、結構マイナーな存在です。



Class 158

西部ローカル運用は、スプリンターと呼ばれる国鉄形気動車が主力となっています。写真は1989年に登場したクラス158気動車で、ロンドンへの新車投入による玉突き転配により、段々運用範囲が西に追いやられているようにも感じます。現在はCardiffやExeterを中心に使用されています。




通勤電車ほか

Class 345

前述の通り、通勤電車はTfLレールが大半を担っており、徐々に運行範囲が伸びて現在はReadingにまで及びます。詳しくはこちらをご参照ください。



Class 332

そして、ここではヒースロー空港発着列車も多く走り、中でもHeathrow Expressは日本人観光客にもお馴染みの存在でしょう。写真は初代車両のクラス332電車で、1998年から2020年まで使用されました。比較的若い車両ながら、保安装置の都合上転用が出来ず、いずれも先述のクラス387電車に置き換えられ廃車となりました。




ちなみに、ロンドン近郊の複々線区間では、中距離列車の一部も緩行線を走ります。まあ、写真を撮る人以外にはあまり関係ない話でしょうけどね。




(2021.12.17作成)