ガラクタのカタログ

大動脈観察その2―西海岸本線

西海岸本線(West Coast Main Line)は、ロンドンとスコットランドを結ぶもう1つの最重要路線。Eustonから内陸を通り、北部から西海岸を経由してGlasgow Centralに至ります。本線級の支線が多く、それぞれBirmingham、Manchester、Liverpoolといった大都市を経由又は発着する列車が多数設定されており、日本で言うところの東海道本線に近い存在と言って差し支えないでしょう。ロンドン近郊では例によって三複線となっており、大都市間を結ぶ速達の長距離列車、Birmingham方面への中距離列車、小駅に停車する通勤電車が行き交います。


長距離列車

2019年までは赤とグレーの塗装が特徴的な、Virgin Trainsの列車が頻繁に運行されていました。デザインが良くマーケティング戦略にも長けたリチャード・ブランソン氏の手腕は、鉄道部門でもいかんなく発揮されていましたが、そのサービスの質はお世辞にも褒められないレベルでした。なお同年以降はAvanti West Coast社がフランチャイズを引き継ぎ、車両の塗装は変わったものの運行形態はほとんど同じです。


Class 390

ここの主力はクラス390電車。2001-04年に投入された後、増結用の中間車を含め2012年にも増備されました。9両編成と11両編成があり、Birmingham、Manchester、Liverpool、Glasgowへ数分おきに特急が走っていて、一部の列車は更にEdinburgh Waverleyまで足を伸ばします。こちらは旧塗装の編成です。



Class 390

2019年時点では大半の編成が新塗装になっていました。クラス390は最高速度200キロで、インターシティに匹敵する俊足特急。なお、現在はAvanti社によって緑と白を基調とした塗装に変更されています。



Class 221

こちらは2001-02年に投入されたクラス221気動車で、クラス220とは一見瓜二つ。ウェールズ方面など非電化区間へ乗り入れる列車を主体としつつ、間合い運用で電化区間だけの列車にも充当されています。こちらは大半の編成が塗装変更されることなくVirgin時代は終わり、現在は順次Avanti社によって白く塗られています。




中距離電車

Eustonを発着する中距離列車を担当するのはWest Midlands Trains社で、JR東日本と三井物産が15%ずつ出資しています。なお、列車はLondon Northwestern Railwayのブランドで運行されており、Milton Keynes方面の列車に充当されます。


Class 350

ここで運用されているのは、2004-14年に製造されたクラス350電車で、前面はJR四国8600系によく似ています。中距離列車にも速達タイプとそうでないものがあり、前者は急行線を走行してBirminghamやLiverpoolにまで足を伸ばすものも。後者は緩行線を走ってWatford Junction以北の各駅に停車するものもあります。



Class 350

クラス350電車は塗り替えが進み、メタリックな緑色が印象的な塗装になりつつありました。しかし規則だから仕方がないとはいえ、前面貫通路だけが黄色く塗られていて全体の雰囲気が台無しになっていました。



Class 319

朝晩のラッシュ時にごく少数が運行される、1987-90年製のクラス319電車。元はThameslinkで走っていましたが、クラス700電車の投入により離脱。London Northwestern Railwayでは僅かな本線運用の他に、支線のローカル運用で細々と使用されています。



Class 325

ちなみにここの緩行線では貨物列車も走っています。ここでの目玉の1つはクラス325電車で、日本では見られなくなった郵便電車が今なお現役です。同車は1995-96年製と、国鉄末期に投入され、現在も最大12連で運行されています。




通勤電車

ワトフォード直流線(Watford DC line)と呼ばれ、London Overgroundが担当。Queen's ParkからHarrow & Wealdstoneまでの間はBakerloo線との共用区間で、ここも西海岸本線と並行しています。Harrow & Wealdstone以北は中距離列車の通過する小駅にこまめに停車し、Watford Junctionへ向かいます。


Class 378

ここではお馴染みのクラス378電車が活躍。なお、西海岸本線は基本的に交流2万ボルトで電化されていますが、通勤電車だけは直流750ボルトの第三軌条方式となっており、他の電車の入線は出来ません。なお、クラス378電車の一部は交直両用ですが、当地で直通運用に就くことはありません。



Class 710

2019年9月からはクラス710電車も投入されています。写真は別路線のものですが、当地では5両編成も運行されています。運行本数を増やすことで輸送力を増強し、クラス378は転出してOvergroundの増発に回ります。




ちなみに、西海岸本線は東海岸本線と比べてカーブが多く、速度制限も厳しいため表定速度に劣ります。他方で、東海岸本線よりも西海岸本線の方に主要都市が多く立地し、工業地帯も多いことから、重要度は西ルートの方が上かもしれません。




(2021.10.15作成)