ガラクタのカタログ

大動脈観察その1―東海岸本線

東海岸本線(East Coast Main Line)は、ロンドンとスコットランドを結ぶ最重要路線の1つ。その名の通りブリテン島の東側にあり、King's CrossからYorkやNewcastle等の主要な市を経由してEdinburgh Waverleyに至る路線で、日本で言えば東北本線に匹敵する存在です。ロンドンではスコットランド方面へ向かう長距離列車、近郊区間を走る中距離電車、更には小駅の客を拾う各駅停車が走るなど、バラエティー豊かな路線となっています。


長距離列車

当地を走る長距離列車は、London North Eastern Railwayが運行するインターシティが主力で、King's CrossとYork、Newcastle、Edinburgh(一部はGlasgow Central)を結ぶほか、Aberdeen、Invernessまで足を伸ばす列車もあります。また、Doncasterから分岐してLeedsへ向かう列車も多数設定されています。


Azuma and IC225

当地の主力は日立製クラス800系列のAzumaで、他にYork以南の限定運用でインターシティ225も使用されています。いずれの形式についても、先に本サイトでご紹介しましたので、リンク先も併せてご覧ください。



HST

2019年までは国鉄の名車インターシティ125も運用に就いていました。Inverness直通列車は乗り通すと8時間以上ですが、全区間を乗る猛者もチラホラいたようです。



Class 180

長距離列車を運行しているのはLNER社だけではありません。Grand CentralはBradford Interchange及びSunderland発着の2系統をクラス180気動車で運行中。2000-01年に製造され、最高速度はインターシティなどと同じ200キロですが、ディーゼルカーということもあり乗り心地は若干劣ります。なお、2017年まではGC社もインターシティ125を使用していました。



Class 180

こちらはKing's CrossとHull(一部はBeverley)を結ぶ、Hull Trainsのクラス180気動車。但しこのディーゼルカーは同社と相性が悪く、2019年には車両故障が頻発したためインターシティ125を借り入れての代走が常態化。結局2020年までに全車が日立製のクラス802に置き換えられました。




中距離電車

中距離列車は全区間で走っていますが、ロンドン近郊ではPeterboroughやCambridgeを結ぶものが主(後者はHitchinから支線へ)。運行を担当するのはGovia Thameslink Railwayで、Great Northern又はThameslinkのブランドで運行中。


Class 700

他のThameslinkと同じく、ここは2014-18年製のクラス700電車が主体。King's CrossとPeterboroughやCambridgeを結ぶ列車の他、一部はKing's CrossではなくSt. Pancrasを発着し、更に南へ進んでPeterboroughとHorsham、CambridgeとBrightonを結ぶものもあります。日本で言うところの湘南新宿ラインに近い存在ですね。



Class 387

こちらは2014-16年に投入されたクラス387電車で、King's CrossからCambridgeを結ぶ最速達及び速達タイプの列車に使用されており、一部はCambridgeからFen線に乗り入れてEly又はKing's Lynnまで直通します。こちらはGreat Northernの名で運行されています。



Class 365

1994-95年に製造されたクラス365電車は、国鉄最後の電車の1つでした。King's CrossとPeterborough及びCambridgeを結ぶ列車に使用されていましたが、クラス387と700の運行開始後は影がすっかり薄くなり、新型コロナウイルス感染症による需要の急減を機に整理されて、2021年に全廃されました。私がCambridgeに住んでいた子供の頃は、この電車がフラッグシップでしたから、僅か15年余りですっかり落ちぶれたのを見て驚いたものです。




通勤電車

他の列車と違ってKing's Crossではなく、シティに近いMoorgate駅から出発する通勤電車(但し日曜日はKing's Cross発着)。1976年まで地下鉄Northern線の一支線だったNorthern City線を北上し、Finsbury Parkで東海岸本線と合流。その後は本線又は支線の各駅に停車し、StevenageやHertford Northまで走ります。Northern City線は直流電化なので、比較的短距離ながら交直両用電車が走っています。


Class717

現在運用されているのは、2018年に製造されたクラス717電車で、この区間もGreat Northern名義で運行されています。クラス700とよく似ていますが、前面貫通路と黄色くない前面のせいで少し印象が違って見えます。なお、クラス717が走っているのは全国でもここだけで、地味ながら珍しい存在です。



Class 313

2019年まではクラス313電車が運行されていましたが、製造後43年が経過し老朽化が著しく、加えて落書き等の破壊行為により、末期は荒廃していました。当地ではクラス717に置き換えられて全廃されましたが、南部では依然少数が健在です。



1938 stock

ちなみに、国鉄移管前の地下鉄時代は、1938ストックが使用されていました。ノーザン線の支線扱いでありながら、本線とは繋がっていなかったため、正直中途半端な存在だったようです。




個人的な話ですが、私は小学生時代も含めてロンドンとケンブリッジの間を頻繁に往復していたものですから、この東海岸本線は最も馴染み深い路線の1つ。車種も豊富で、鉄道ファンには申し分ない存在です。




(2021.10.15作成)