ガラクタのカタログ

幹線観察その1―南西本線


South West Main Lineは、WaterlooとDorsetにあるWeymouthを結ぶ路線ですが、ロンドン南西部から更に郊外へ広がる住宅街との間の大事な通勤の足でもあります。Guildford、Reading、WeybridgeやWindsorなど支線直通の通勤電車が最大12両編成で走るほか、Bournemouth、PortsmouthやSalisburyへ向かう中・長距離列車も行き交います。

運営は定時運行率が低いSouth Western Railway。ロンドンより南を走るということで、この路線は基本的に直流750Vの第三軌条方式で電化されており、架線や電柱が無くスッキリとしていることから、電車を撮る身にはちょっと嬉しいところです。


通勤電車

Class 455

当地最古参の国鉄クラス455電車は、1982-85年製。ケンブリッジ方面でお馴染みのクラス317電車の直流版で、一部編成は写真のようにクラス508の付随車を組み込んでおり、断面が一目瞭然です。2019年から新鋭クラス701電車に置き換えられるはずが、例によって調整に著しく手間取っており、2022年1月現在では未だ運用入りせず。ということで、クラス455は未だに短距離区間の主力を担います。
ちなみに、ブライトン本線でも同型車両が走っています。



Class 456

クラス456電車は、国鉄民営化も近い1990-91年に製造されました。全車2両編成で、最末期はクラス455と併結して8ないし10両編成を組んでおり、事実上の増結用として使われていましたが、2022年1月に全車が運用から離脱しました。



Class 458

1998-2002年に製造されたクラス458電車。落成当初から故障が続出して使い物にならず、デビューして3年ほどで多くが運用を離脱。引き取り先はしばらく決まらず、前面デザインが変わるほどの大規模な改修工事を経てようやく復帰しました。この時にGatwick Express用だった姉妹形式のクラス460電車を編入し、5両編成の通勤電車として現在も使用されています。



Class 707

2015-18年に製造されたクラス707電車は、その外観から分かる通り、Thameslinkクラス700電車の直流版。しかし、かなり新しい車両にもかかわらず、SWR社は新鋭クラス701電車による置き換え対象に指定。クラス707は2021-22年にかけてSoutheastern社へ転属しています。




中・長距離列車

Class 444

ロンドンとDorsetなど南西部の主要都市を結ぶ中・長距離列車で運用されているクラス444電車。2002-04年に製造され、日本など東アジア圏ではまずありえない形式名となっています。デッキ付の片開きドアは、強いて言えば日本における急行形車両に近い感がしなくもありません。現在はPortsmouth HarbourとWeymouthへ向かう列車を中心に使用されています。



Class 450

ほぼ同時期の2002-06年に投入されたクラス450電車。クラス444とよく似ていますが、こちらはデッキのない両開きドアであり、中距離列車のほか短距離の通勤輸送も担います。シーメンスが造ったDesiroシリーズでは、イギリスで最も車両数が多い存在で、SWR社でも最大勢力を誇ります。クラス444の代走に使用されることもあり、その際はちょっと評判が良くないようです。



Class 159

1993年に営業運転を開始した国鉄クラス159気動車。元は1989-92年に登場したクラス158気動車を長距離列車向けに改造したもので、SalisburyからExeter St DavidsないしYeovil Pen Millといった非電化区間への直通列車で運用中。ラッシュ時には3連を3本繋いで9両編成で走ります。



Class 159

ちなみに、赤が特徴的な南西本線の車両たちは、いずれもSWR社の前の運行会社であるSouth West Trainsの塗装で、SWR社は新車の投入に先立ち順次車両を塗り替えていました。クラス455・456・707のように引退間近な車両は別として、既存車両はいずれもこのような紺とグレーをベースとした装いに間もなく統一される見込みです。



なお、当地では長距離列車用に国鉄のクラス442電車をリニューアルして、2019年に運行を開始したものの、不具合によりすぐに離脱。2020年初頭に復帰するも、COVID-19の感染拡大によって再離脱となり、翌年までに全車廃車となってしまいました。




(2022.2.11作成)