ガラクタのカタログ

車内探訪

イギリスの鉄道車両はどのような感じで、日本とどう違うのか?
私は「撮り鉄」ですから、基本的には列車が走行する際の編成写真ばかり撮っており、その写真には当然外観しか写っていません。しかし、せっかくなので車内の様子も少し載せ、一般的なイギリスの電車の雰囲気を少しだけご紹介します。

ここではロンドン地下鉄とナショナルレールの一部を取り上げます。もちろん、細かい部分は形式や運行会社によって異なりますが、大体のイメージが出来る程度にはまとめられたかと思いますのでご笑覧ください。


ロンドン地下鉄

Tubeと呼ばれるだけあり、蒲鉾状の小さい車両をイメージする方が多いですが、全路線がそうではありません。個々の形式についてはこちらで既に触れた通りですが、大型車両と小型車両では高さが1メートル違う分、雰囲気が少々異なります。いずれもロングシートが主。

1995 stock

小型車両は高さが低いため、吊り革が存在しません。元々収容力が低い当地の地下鉄は、いくら本数が多いと言っても東京の地下鉄に大きく劣る輸送力のせいで混雑は常態化しており、座席上部の手すりに掴まるのが難しいことも多々あります。写真はノーザン線の1995ストックで、まあ標準的な小型車両と言えましょう。



1972 stock

ベーカールー線の1972ストックには、写真奥に見える通り、編成内にボックスシートが設置されている車両があります。一応セミクロスシートと言って差し支えないでしょう。



1938 stock

こちらは動態保存車の1938ストックで、この時代はクロスシート主体だったことが分かります。このデザインは現代でも通用しそうですが、雨が降った後は井の頭線の「グリーン車」のごとく嫌な臭いがしそうです。



S7 stock

大型車両は天井が高い分かなり開放的に感じます。東京の地下鉄で言うと、浅草線など18m級の車両とほぼ同じ寸法で、何と冷房が付いています。写真はオールロングシートのS7ストックですが、メトロポリタン線を走るS8ストックの場合はセミクロスシートとなっています。



1996 stock

ちなみに、1995ストック以降の電車では電光掲示板が付いており、行先・次駅・乗換に関する字幕が最低限流れます。小型車両の場合は側面窓の上、S7・8ストックの場合は大型のものが進行方向に対して直角に設置されています。なお、2024年に登場する予定のピカデリー線向け新型電車は、日本でお馴染みの液晶画面がようやく搭載されるようです。




ナショナルレール

Class 365

ナショナルレールの車両は様々で、その違いも多岐にわたりますが、ドアが半自動というのは共通しています。古い車両の場合はボタンをちょっと長押ししないと開いてくれないのは、日本でも一昔前のキハ40系などでお馴染みですね。日本では少数派のプラグドアがこちらでは主流です。
ちなみに、車内に入るとドア脇に操作盤が隠れており、車掌が編成の中間からドアを開け閉めすることもよくあります。その場合は、先に車掌のいる場所以外のドアを閉めてから、安全確認した後そのドアを閉めるという手順を踏みます。



slam door

2020年までは手動ドアが残っていました。これは乗客が外側にあるハンドルを回してドアを開けるもので、降りる場合は一段下降窓を開けて身を乗り出してハンドルを握らなければならないという、何とも危なっかしいものでした。発車前にはホームにいる数人の係員がドアを手で閉めて、合図を確認した車掌が電子施錠していました。かつては電車や気動車でも多く見られ、大抵はコンパートメント式の多扉車でしたが、2000年代半ばまでにほぼ全滅。最後はInterCity 125を中心とするマーク3客車に残っていました。



Class 317

車内は基本的にクロスシート。国鉄形の場合、3+2列というパターンも多く見られますが、近年は2+2が主流です。但し、長距離列車でもリクライニングはおろか転換座席でもないため、日本と比べるとかなりサービスの質は劣ります。ちなみに、オールロングシート自体イギリスでは珍しく、地下鉄を除けばOvergroundのクラス378や710電車くらいしかありません。



Class 800

長距離列車の場合は座席指定が出来る場合もあります。JR東日本の「スワローサービス」とよく似ており、車両内に指定済座席と未指定座席が混在しています。クラス800系列など最近の車両の場合、座席上のランプと表示機で座れるかどうか分かります(JR東日本とは色の使い方が異なるので注意)。但し、壊れて消灯していることも珍しくありません。



座席指定票

インターシティやクラス175気動車などの旧型車両では、紙の予約票が使われてることも。もっとも、座席の背もたれに挿してあってもいつのまにか通路に落ちて、誰かに踏まれてどこかへ行ってしまうことも多いほか、他の人が座席を占めて、何を言ったところでどいてくれないことも。その場合は諦めましょう。



座席指定はインターネットでも出来ますが、路線によっては号車番号が列車によってバラバラ。例えば、King's Cross駅発着の列車はまずずれることはありませんが、Paddington駅発着の場合は編成の前後が直前にひっくり返り、「『進行方向の席』にチェックを入れたのに逆じゃないか」という話はざらです。ちなみに座席指定の追加料金はなく、指定席を捨てても問題ないことが多く、赤いランプが並びながらガラガラというのもよくある話。


Class 365

長距離列車の1等車は食事と飲み物のサービス付きで、座席もそれなりのものが使われているようです…が、貧乏な私には全く縁のない話でした。
1等車はしばしば中距離列車にも設定されていますが、こちらは普通車と全く同じ座席で、背もたれのカバーにFirst Classと書いてあるだけ。混雑時にも座れるというのが唯一の存在意義ですが、それにしては料金が高すぎます。廃止も議論されていたほか、Southern社など一部の列車は通常の切符でも利用を認めているケースがあります。もっとも、確信が持てない限りは座らない方が無難でしょう。



Mark 4

長距離列車では、日本ではほぼ姿を消したビュッフェや食堂車も現役で、その存在は外観からも一目瞭然。ただ、車内は狭い上にスタッフが写ってしまうので、ここで内部の写真を上げるわけにはいきません。肝心なところをお見せ出来ませんが悪しからず。




雑駁ではありますが、こんな感じでイギリスの鉄道の雰囲気が伝われば幸いです。実物は新型コロナウイルス感染症が世界中で収束した後、ご自身の目で確かめて下さい(いつになるかな)。




(2021.8.13作成)