ガラクタのカタログ

ロンドン地下鉄その2―普段の車両編

概要

ロンドン地下鉄の車両は、小型車両(deep-tube trains)と大型車両(sub-surface trains)に大別されます。大半の車両は前者に分類され、かまぼこ状の小ぶりな車体が特徴的です。後者は黎明期に建設されたメトロポリタン線など4つの路線で運行されており、高さが1メートル違います。なお西部の郊外では両者共用の区間があるほか、ベーカールー線の北側も一般の鉄道車両との共用区間となっています。

イギリスの鉄道車両については、英語版ウィキペディアを読めば必要な情報を得られるであろうし、やや古いとはいえ他のファンの方が日本語版のページやサイトを作っているようですので、本サイトでは特に注目度の高い地下鉄の車両について触れる程度に留めておきます。このページでは、2020年現在一般営業運転に就く8車種を取り上げます(事業用に転用された車両は数から除外)。動態保存車両及び引退した車両の一部は次頁をご覧ください。

小型車両

1972ストック Bakerloo

ベーカールー線

1972-74年に投入され、かつてはノーザン線や現在のジュビリー線でも運用されていましたが、1999年以降はベーカールー線のみで使用されています。7連36本が在籍し、現役の地下鉄車両としては最古の存在で、行先表示機が幕式なのは今やこの車両のみ。直近では2016-18年に更新工事を受けているものの、老朽化に破壊行為等で状態の悪い車両が目立ちます。置き換えは度々話題に上りながらも延期され、現時点では2035年まで継続使用する予定となっています。60年も持つようには思えないのですが…。



1973ストック Piccadilly

ピカデリー線

1974-77年に製造され、観光客が多く乗るピカデリー線で「6連86.5本」が運用されています。この中途半端な数字は、一部が3+3両編成を組んでいることが理由で、検査や故障時など稀にユニットを交換する例があるようです。1972形とよく似た外観ですが、1973形は更新工事の際に前面行先表示機がLED化されたことに加え、運転台周りが黒く塗装されている点が異なります。こちらも老朽化が著しく、2025年から置き換えが始まる計画になっています。



1992ストック Central Waterloo & City

セントラル線

1991-94年にセントラル線及びウォータールー&シティ線に投入されました。前者は8連85本、後者は4連5本が在籍しています。英国ではやや珍しいチョッパ制御の電車で、セントラル線の車両は更新工事により前面が黒から赤く塗り直されました。ちなみに、ウォータールー&シティ線は1994年まで国鉄が管理・運営しており、当線の車両はクラス482と呼ばれていました。また、塗装も他とは異なり青色でしたが、現在は他の地下鉄車両と同様に塗り直されています。



1995ストック Northern

ノーザン線

1996-99年に6連106本が製造され、IGBT-VVVF制御を採用しています。「1995」と命名されたものの調整に手間取り、最初の1本が営業運転に入ったのは98年、旧型車両の置き換え完了はその更に3年後でした。なお、この車両の投入をもって、ロンドン地下鉄は全定期列車のワンマン運転化を達成しています。



1996ストック Jubilee

ジュビリー線

ジュビリー線の東側区間延伸開業に先駆けて、1996-98年に製造されました。外観は1995ストックと瓜二つですが、足回りはGTO-VVVF制御で走る時の音が全く違うほか、内装にも違いが見られます。当初は6両編成で登場しましたが、需要の増加を踏まえて2005年に中間車両が増備され、現在は7連63本が活躍しています。



2009ストック Victoria

ヴィクトリア線

2007-11年に8連47本が製造され、2009年に営業運転を開始しました。それまでの車両は断面が半円でかまぼこ状だったのに対して、2009形は角ばった印象を受けます。現時点では小型車両最新鋭ですが、1996形以前の車両と比較してあまり進歩がありません。



大型車両

Sストック Circle District Hammersmith& City Metropolitan

Sストック

ロンドン地下鉄最新鋭にして、冷房が付いた初の車両。1960-80年に製造された旧型車両を一掃するべく、2008-17年に7連133本と8連58本が投入され、ロンドン地下鉄最大の車両数を誇ります。Sストックは更にS7ストックとS8ストックに分かれており、前者は7両編成ロングシートの通勤電車仕様、後者は8両編成でボックスシートもある近郊電車仕様です。S7形はサークル、ディストリクト及びハマースミス&シティ線で、S8形はメトロポリタン線で運用されています。



将来の車両

クラス345 Crossrail / Elizabeth

クラス345

遅々として建設が進まないクロスレール用の車両として、2015年から製造されています。クロスレールはロンドンを東西に貫く通勤路線で、都心区間はエリザベス線の愛称を付けられていますが、肝心の開業は当初予定の2018年から2023年に延びており、新型コロナウイルス感染症の影響で更にずれ込むことが見込まれます。クラス345は暫定的にTfLレールの名の下に地上区間で運行されていますが、地下鉄の一員として走る日はまだまだ先になりそうです。



New Tube for London Bakerloo Central Piccadilly Waterloo & City

2025年からピカデリー線で営業運転を開始する計画の新型車両。製造元のシーメンスはInspiro Londonという名前を付けており、登場時には2024ストックのような形式名が付くと思われます。老朽化著しい1973形の置き換え用で、小型車両では初となる冷房装置の搭載や、車両間の行き来を可能とする貫通幌の設置など、新機軸の採用が決定しています。現時点では2024年から製造される予定ですが、昨今の英国では新型車両を巡る初期不良が続出して年単位の調整を要していることに鑑みて、その姿を拝める日は相当先になるでしょう。

また、この他にも1972及び1992形の置き換えが2036年までに実施される計画となっており、各駅ホームドア設置が進んだ暁には、各線で完全無人運転が実施されることになっています(たぶん2050年くらい)。