ガラクタのカタログ

Docklands…ドッグ(犬)じゃないよ、ドックだよ!


ドックランズはその名が示す通り港湾地帯。ロンドン東部のテムズ川一帯に広がり、17世紀末から19世紀にかけて繁栄して大英帝国を支え、一時は世界最大の港になりました。華やかな帝国時代の陰で貧困に起因する問題が多発したことは、ディケンズを始めとする当時の文学にも描かれています。ドイツ軍による空襲により壊滅状態となり、戦後持ち直すも1960年代には急激に衰退。現在も失業率と犯罪率の高い地区となっています。

他方、1980年代からは大規模な再開発事業が順次行なわれ、小綺麗な商業地区と住宅街に生まれ変わったエリアもあります。交通機関も整備が進み、以前と比較すれば随分地の利が良くなりました。ここではDocklands Light RailwayとEmirates Air Lineを中心に取り上げます。



ジュビリー線とDLR

Jubilee線

1996ストック

と、その前に…当地で最も重要な存在である地下鉄Jubilee線に触れないわけにはいかないでしょう。同線はかつてCharing Crossとロンドン北西部を結ぶだけの存在でしたが、1999年に東部Stratfordまで延伸し、総距離は倍近くになりました。ナショナルレールや後述のDLRと違い、都心の真ん中に1本で行けるという点で、非常に大きな存在です。本数も都心並みで申し分ありません。




Docklands Light Railway

B07ストック

ドックランズ地区を走る鉄道としてお馴染みなのはDocklands Light Railwayで、東京で言うところのゆりかもめに近い位置付けですが、DLRは新交通システムではなく通常の鉄道に似た線路を走ります。現在は2両編成を2本又は3本組み合わせた無人の列車が走っており、いずれも真っ赤に塗装されています。ゾーン1の都心部に一応乗り入れており、東側にBankとTower Gatewayの2駅が設けられています。



Tower Gateway

基本的に無人運転で、先頭の座席が子供に人気なのは古今東西同じ。営業運転での最高速度は80km/hで、乗り心地はあまり良くありません。なお、無人と言ってもスタッフが乗り、ドアの開閉と抜き打ちの検札を実施することもあります。善良な市民たる皆さんは大丈夫でしょうが、電車賃をちょろまかそうと考えると結構な確率で痛い目に遭うようです。



Prince Regent

駅の雰囲気はこんな感じで、ほとんどは自動改札機のない無人駅。当然ながらホームドアというものは付いておりませんし、次の列車が4両なのか6両なのかも案内されません。なお、お馴染みの地下鉄路線図では分かりませんが、DLRの路線図に書かれている通り実際には幾つかの運行形態に分かれていて、しかも分岐駅では同じ行先の列車が違う階から交互に発着するなど、相変わらずの不親切設計となっています。



Custom House

Crossrailの工事が(チンタラ)進められていました。本来の開業日から随分経ってしまいましたが、2022年にようやく暫定開業を迎え、都心へのアクセスが向上しました。





London Cable Car

North Greenwich

これは鉄道に分類出来るか怪しい気もしますが、ロープウェイがGreenwich Peninsula(地下鉄North Greenwich駅近く)とRoyal Docks(DLRのRoyal Victoria駅近く)を結んでいます。2012年ロンドン五輪に合わせ、直線距離は短いながら絶妙に交通不便だった川の両岸を結ぶ形で開業。エミレーツ航空が命名権を獲得し、2022年まではEmirates Air LineないしEmirates Cable Carの名前で呼ばれていました。命名権契約が更新されたことで、2022年10月からはIFS Cloud Cable Carと呼ばれているようです。ちなみにcable carは英語でロープウェイの意味で、日本人にとってはややこしいですね。



ゴンドラ1つは大人6人乗り。料金プランは幾つかありましたが、単に乗るだけならオイスターカードで片道£3.50で、交通費の高いこの国にしてはまあまあな値段です。所要時間は概ね10分で、平日の昼間なら待ち時間はゼロでゴンドラを独り占め出来るので、割と楽しむことが出来ました。



真下に広がるのは水質汚染甚だしいテムズ川と、再開発真っ最中のドックランズ地区。道路や鉄道の整備が進み、それなりにポテンシャルのありそうな土地だという印象を受けます。反対側にはCanary Wharfの高層ビル街が見え、10分弱の旅路はあっという間に過ぎていきました。メジャーな観光地とは言えないものの、在住者であれば一度くらい足を運んで損は無いでしょう。




(2021.6.18作成、2022.10.21更新)