ヴィクトリア (1837-1901)
概要
近代郵便制度の基礎が確立したのは、ヴィクトリア女王の即位から3年後の1840年で、世界で初めて切手が用いられたことでも有名です。郵便ポストの歴史は1853年に始まり、黎明期は形状がまちまちで基本的には緑色に塗装されていましたが、後年識別を容易にするためにある程度デザインを統一し、色も明るい赤へ変更されました。
新興地など一部地域を除けば意外に多く残っており、エリザベス2世に負けないくらいに多くの種類が現存しています。但し、復刻版として後年設置されたものもあり、VRの紋章を有する全てのポストが骨董品というわけではないようです。
ギャラリー
(1-1) これは私が見たことのある中では最も古いもので、統一規格が出来る前の1857年に造られました。Victoria Reginaの頭文字VRと、その周りにある金色の装飾が目を引きます。ちなみに、中央左側にある小さな穴は、取り出し口の鍵穴です。
(1-2) 現役のものとしては最古参の1つで、1856年に登場しました。ちょっと変わったデザインもさることながら、投函口が縦になっていることが特徴です。例によって最初は緑でしたが、赤が定着するまでの間は何度か塗装が変更されたそうです。
(1-3) この形式には紋章が無い…かと思いきや、側面上部にVRの文字が書かれていました。厳密には紋章と呼べないものですが、王冠のマークもある以上、紋章に準ずるものと見てよろしいでしょう。
(1-4) 1866年に製造された六角柱タイプ。赤い塗装が見え隠れしていますが、どうやらどこかにあったものを引っこ抜き、上から緑で塗り直して保存されたようです。大方みんながペタペタ触って剥げてきたのでしょう。
(1-5) 同年に製造されたマイナーチェンジ版。現在も地方では緑色のまま現役で使われているものもあるとか。但し、夜になると歩行者がぶつかるので、壁や柵の近くに移したケースもあるそうで、現役としての保存も楽ではなさそうです。
(1-6) 同形式でも赤く塗られたものは、結構な数が現存しています。マイナーチェンジ版を合わせて200本余りが全国に点在していますが、そのうち相当数はレプリカとのこと。しかし識別はなかなか難しく、これがどちらかは判然としません。
(1-7) これらのタイプで個人的に最も好きなのは、上部にある葉っぱ模様。シンプルながら割と可愛らしい印象を受けます。赤に葉っぱとは一見妙ですが、これがかつては緑色に塗られていたことを考えると納得がいきます。
(1-8) お馴染みの円柱形タイプ(正統派のPillar Box)は1879年から量産されました。都心部や新興住宅地では見かけませんが、郊外や地方都市ではチラホラ目にする存在です。ちなみに初期に造られたものは、紋章が省略されています(参照)。
(1-9) ありふれたピラーボックスかと思いきや、反対側にも投函口が設置されているタイプ。退役軍人用の老人ホームの門にあるもので、入居者がわざわざ門を出ることなく手紙を投函出来るように設計された、地味ながら珍しい一品です。
(1-10) こちらは都会でよく見る投函口が2つあるタイプなのですが、本来の位置から大きく外れた側面にヴィクトリアの紋章が描かれています。この形式は1899年に登場し、現代に至るまで見た目がほぼ同じものが製造されています。